意識障害に対する作業療法【実習に役立つ】評価・リスク管理・リハビリの方法

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急性期病院では意識レベルの低下している

患者さんと関わる機会があると思います。

実習生は意識レベルが低下している方と

関わることが少ないかもしれません。

ですが、

症例さんが急に意識レベルの低下を

起こす可能性はあります。

意識障害者に対する評価方法・リスク管理・リハビリの方法

簡単にではありますが、

まとめさせてもらいました。

実習先でも役に立つ知識です。

状態の悪くなった患者さんに対して、

どのように対応した方が良いか、

しっかりと勉強しておきましょう!!

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意識障害に対する作業療法

Ⅰ.意識に関する部位

覚醒の維持には,橋の上位から中脳の被蓋に存在する上行性賦活系脳幹網様体が関係している.脳幹網様体は大きさや形が異なる様々な神経細胞からなる疎な組織で,体性感覚,内臓知覚,聴覚,視覚の側副路が投射し,さらに視床非特殊核と密な神経回路を形成している.

視床の非特殊核は大脳全体に投射している.この上行性賦活系脳幹網様体のどこかで病変が生じると,高度な意識障害が起こる.また,大脳皮質も広範な障害をきたすと,意識障害がみられる【図1】.したがって,あらゆる感覚刺激は上行性脳幹網様体を介して大脳全体を興奮させ,意識を覚醒に導くことを前提に治療プログラムを考える.

【図1:意識障害の機序】

A:上位脳幹(中脳~橋上位)レベルの障害
B,C:上位脳幹から間脳(視床・視床下部)レベルの障害
D:大脳の両側性の広範な障害
E:閉じ込め症候群:橋底部の両側障害
 皮質延髄路と皮質脊髄路が障害され、
 意識障害ではないが、意志の伝達が、
 不可能になった特殊な状態

Ⅱ.意識障害の評価方法

1.JCS(Japan Coma Scale):脳血管障害による意識障害に用いられることが多い.

Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態(1桁で表現)

1.だいたい清明だが,いまひとつはっきりしない

2.見当識障害がある

3.自分の名前や生年月日がいえない

Ⅱ.刺激すると覚醒する状態-刺激をやめると眠り込む(2桁で表現)

10.普通の呼びかけで容易に開眼する

20.大きな声かけやまたは身体を揺さぶることにより,かろうじて開眼する

30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと,かろうじて開眼する

Ⅲ.刺激しても覚醒しない状態(3桁で表現)

100.払いのける動作をする

200.少し手足を動かしたり顔をしかめる

300.痛み刺激に全く反応しない

2.GCS(Glasgow Coma Scale):急性期頭部外傷に適用されることが多い.

開眼
(Eye Opening)

E4:自発的に開眼する

E3:呼びかければ開眼する

E2:痛みを加えれば開眼する

E1:開眼しない

言葉による最良の応
(Best Verbal Response)

V5:見当識あり

V4:混乱している

V3:不適当な言葉

V2:理解不能な発声

V1:発声なし

運動による最良の応(Best Motor Response)

M6:命令に応じた運動

M5:痛みを払いのける

M4:逃避的な屈曲運動

M3:異常な屈曲運動

M2:異常な伸展運動

M1:運動なし

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Ⅲ.作業療法介入の進め方(意識レベル向上へのアプローチ・リハビリ方法)

1.さまざまな感覚刺激を少量・頻回に入力することで意識レベルの改善をはかる.

①さまざまな感覚への刺激入力

・好きな音楽を流す,話しかけるなどの聴力への刺激.

・好きな花や香水での嗅覚への刺激.

・熱いタオルなどで顔を拭くなどの表在感覚への刺激.

・ROM訓練や血圧を測定しながら端坐位にするなどの体性感覚への刺激 など.

 ※ポイント:感覚入力が保たれている非麻痺側から刺激を入力する.

②このようなケースもあります

状況:傾眠傾向が強いが原因がわからない.SpO2が90%前後に下がっているが,画像や血液検査などからは肺炎などの呼吸器系の異常はみられない.

患者の様子:病室にいくと,いびきを強くかいていた.側臥位にするといびきは収まり, SpO2も97%程度に改善した.看護師と協力して,積極的に側臥位をとるようにすると,翌日には元の意識レベルまで改善がみられた.

原因・対策:背臥位では舌が落ち込み上気道を閉塞しやすいので,いびきをかいている人には側臥位をとるのもひとつの方法である.

2.訓練に用いる感覚刺激とは何か?

感覚は①特殊感覚 ②体性感覚 ③内臓感覚 に分けられる.訓練に用いられる感覚は①特殊感覚 ②体性感覚で,【表1】に示す.意識障害のあるときは,特殊感覚を刺激し,直接脳神経に刺激を与えるようにする.また,体性感覚も利用し,多くの刺激を入力する.

【表1:感覚の分類】

①特殊感覚:脳神経に関係する器官からの感覚
・嗅覚 ・視覚 ・味覚 ・聴覚 ・平衡感覚

②体性感覚

表在感覚:皮膚や粘膜などからの感覚
・触覚 ・痛覚 ・温度覚

深部感覚:筋肉・骨膜・関節などからの感覚
・位置覚 ・関節覚 ・運動覚 ・圧覚

複合感覚:頭頂葉で表在感覚と深部感覚を統合し,知覚の認識と識別を行う感覚
・2点識別覚 ・立体認知 ・重量認知

【表2】に感覚刺激に使用する主な材料例を示す.これらは,個々の対象者にとって馴染みのあるものがより有効で,その作用が反応を引き出すきっかけとなる.

【表2:感覚認識拡大のための材料例】

1.嗅覚 果物,香りの良い花,ハーブティー,コーヒー,ポプリ,焼き立てパン,チョコレート,ハンドクリーム,馴染みのある香水 など
2.視覚 写真,はっきりした単色の物品,触覚から視覚に移してゆく
3.聴覚 楽器,ベル,目覚まし,鳥の笛,聴きなれた曲
4.触覚 植物,葉,枝,園芸関連のもの(土,鉢など),台所道具,日曜大工道具,肌触りの違う織物による小物,懐かしいカメラや時計,文具,雑誌や書籍,水や氷,懐かしい玩具,季節道具,スポーツ道具,楽器 など
5.味覚 お茶,果物,甘いクッキー,塩味のクラッカー,熱い飲み物,ジュース,ミルク など

3.意識障害に対する坐位訓練

坐位開始時期については積極的な意見,消極的な意見があるが,早期離床は二次合併症の防止に必要不可欠である.まず,坐位耐性訓練から開始されるが,この際,バイタルサインの変動には十分な配慮が必要である.坐位耐性訓練の開始基準,施行基準,訓練の中止の基準を【表3】に示す.

【表3 坐位耐性訓練の基準】

坐位耐性訓練の基準

1.障害(意識障害,運動障害,ADL障害)の進行が止まっていること

2.意識レベルが1桁であること

3.全身状態が安定していること

坐位耐性訓練の施行基準

1.開始前,直後,5分後,15分後,30分後に血圧と脈拍を測定する

2.30度,45度,60度,最高位の4段階とし,いずれも30分以上可能となったら次の段階に進む

3.まず,1日2回,朝食・昼食時に施行し,安定したら食事ごと,とする

4.最高位で30分以上可能となったら車椅子坐位訓練を開始する

坐位耐性訓練中止の基準

1.血圧の低下が10mmHg以上のときは5分後の回復や自覚症状で判断,30mmH以上なら中止

2.脈拍の増加が開始前の30%以上,あるいは120/分以上

3.起立性低血圧症状(気分不良等)がみられた場合

開始は1.障害(意識障害,運動障害,ADL障害)の進行がとまっていること,2.意識レベルが1桁であること,3.全身状態が安定していること,の3項目を満たしたあとに開始するのが安全である.

一般的には,血圧,脈拍,自覚症状を観察しながら,ギャッジベッドで徐々に傾斜角を上げていく.端坐位に移行するときは患者の状態を観察するとともに,ナースコールを手元に置くなど応援を呼べるようにすること,バルーンカテーテルや点滴ラインの長さ,点滴が落ちているか,高さが十分であるかを確認することが必要である.

また,経鼻栄養中もしくは終了後まもなくの姿勢変換や坐位訓練により嘔吐する患者を経験する場合がある.できればそのような時間帯はさけるべきである.

また,坐位訓練には起立性低血圧への対応,バランスの練習,体幹・頸部筋の賦活,褥瘡予防などの目的もある.方法としてはベッド臥床状態から端坐位をとらせる.モニタ管理下で行い,血圧などの変動が大きいようであれば,ベッドのギャッジアップを用いて徐々にベッドの角度を増す.頭位をあげるタイミングは近藤らの基準(表4)が参考になる.

【表4 坐位耐性訓練基準(船橋二和病院リハビリテーション科)】

1)安静度・坐位訓練開始時期

①脳卒中急性期には,2~5割の確率で増悪が見られ,まれに坐位による血圧降下が増悪の誘因になるので,数日間は安静が無難であることを患者・家族に説明する.

②意識障害と麻痺の程度により,(増悪の危険率は異なるので)安静期間を区別する.

a)意識が2・3桁例は1桁に回復するまでは安静

b)意識が1桁でBS4以下の(中等度~重度)麻痺は4割増悪するので,3日間は床上安静

c)意識が1桁でBS5以上の(軽度)麻痺や意識清明例は増悪頻度は5%程度

・すでに発症後数日経過しており症状が安定していた場合には入院初日から

・患者が坐位での排泄・食事を強く希望する場合可能.

ただし,上記①について説明し,(坐位による血圧降下が増悪の誘因になりうるので)

軽症例でも初回は,血圧・症状の観察下で行う.

③全身状態が安定していること.憎悪が見られた場合,停止を確認してから開始する.

2)訓練方法

①来院時あるいは医師の診察時に起座・歩行可能なものは,はじめから端坐位でよい.

②上記(①)以外は,30度,45度,60度,最高位(80~90度)のギャッジ坐位,車イスの5段階とし,30分可能となれば次の角度にあげる.

③患者・家族に以下の説明をしてから開始する.

a)憎悪の危険が高い時期が過ぎたので座る訓練を開始する.

b)まれに頭部挙上で憎悪するが,血圧や症状などの観察下で行うので危険はない.

④訓練は,可能なら午前と午後の2回行う.

3)観察項目

①患者の意識レベル,話しかけに対する反応,顔貌,坐位バランス

②血圧と脈拍:開始前,直後,5分後,10分後,15分後,30分後

③患者の自覚症状(気分不良,嘔気,めまい,疲労感など)を問いながら行う.

4)中止基準

①意識や反応が鈍くなった時には中止.

②血圧低下が30mmHg以上の時には中止する.

③血圧低下が30mmHg未満の時には,その後の回復や自覚症状で判断する.

④血圧上昇時は脳梗塞では自覚症状がなければ続行してよい.脳出血時には,30mmHg以上の上昇,180mmHg以上になった場合には中止.

⑤自覚症状を訴えた時には,他覚症状をみて総合的に判断する.

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Ⅳ.ベッドサイド訓練のリスク管理について

ベッドサイドROMや坐位保持訓練が中心となるが,リスクの高い対象者の場合,訓練前に医師や看護師より,容体の変化や発熱等,その日の状態をきいたうえで,訓練を進めていくことが大切である.ベッドサイドOTの注意点とその対応を【表5】に示す.バイタルサインのチェック,ライン管理,対象者の安静度の確認が大切である.

 【表5 ベッドサイド訓練のリスク管理】

点滴がつながっている ROM訓練,体位変換時に抜けていないか,もれていないかを確認する.
末梢部(四肢) 関節部の場合は施行しない.同一の部位が続く場合,医師や看護師と話し合う.
中心性静脈栄養(IVH) 鎖骨下静脈の場合,肩関節のROM訓練には特に問題ないが,大腿静脈では股関節のROM訓練には問題となる.
医師の指示に従う.
バルーンカテーテル 抜けないように注意する,床に直接置かない.
経管栄養が行われている 経管栄養の途中や直後は坐位など腹圧がかかると嘔吐することがあるため,避ける.
血管造影の検査後 安静が解除になるまで行わない.
手術後患者である 手術後患者の取り扱いに従う.安静度を厳守する.リハ開始の許可後におこなう.
脳室・脊髄外ドレナージ中 原則として坐位をとらない.
骨窓がある 骨窓部を下にしない.特に転倒させない.
喀痰できない 看護師,医師に連絡し,吸痰してもらう.
坐位開始 医師の許可のもとすすめる.血圧などバイタルサインをチェックしながら,ギャッジアップより開始する.

この時期には手や肘関節などの関節部の末梢の点滴,中心静脈栄養(IVH)が患者に挿入されていることも多く,その場合点滴が止まっていないか,もれていないかなどに注意しなければならない.他にも経鼻栄養チューブ,膀胱カテーテルなどが患者に挿入されていたり,心電図テレメーターのセンサーが取りつけられていたりし,ROM訓練中に誤ってラインを引き抜いたりしないよう十分注意しなければならない.もし,問題が生じたら医師,看護師に連絡をする.

訓練中止の目安

脳血管障害者の訓練の可否および訓練中止の目安は,土肥のAnderson改訂基準が一般的である.【表6】に示す.

【表6 土肥のAnderson改訂基準】

A.訓練を行わない方がよい場合

1.安静時にすでに脈拍120/分以上
2.拡張期血圧120mmHg以上
3.収縮期血圧200mmHg以上
4.動作時しばしば狭心痛を起こすもの
5.心筋梗塞発作後1ヵ月以内
6.うっ血性心不全の所見の明らかなもの
7.心房細動以外の著しい不整脈
8.安静時すでに動悸,息切れのあるもの

B.途中で訓練を中止する場合

1.運動中,中等度の呼吸困難が出現した場合
2.運動中,めまい,嘔気,狭心痛が出現した場合
3.運動中,脈拍が140/分以上になった場合
4.運動中,1分間10回以上の不整脈が出現した場合
5.運動中,収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合

C.途中で訓練を休ませて様子をみる場合

1.脈拍数が運動前の30%以上増加した場合
2.脈拍数が120/分をこえた場合
3.1分間10回以下の不整脈の出現
4.軽い息切れ,動悸が出現した場合

参考文献

古川宏:作業療法のとらえかた.文光堂

澤俊二,他:作業療法ケースブック 作業療法評価のエッセンス.医歯葉出版

柳沢健:理学療法ゴールドマスターテキスト5.中枢神経系理学療法学.メジカルビュー社

坪田貞子:身体作業療法クイックリファレンス.文光堂

園田茂:動画で学ぶ脳卒中のリハビリテーション.医学書院

日本作業療法士協会:作業療法マニュアル10 OTが知っておきたいリスク管理Ⅰ.日本作業療法士協会学術部,2

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