高次脳機能障害の代表的な3つの症状、
『失語症』、『失認症』、『失行症』を学んでいこう!!
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目次
◆失語症
◇定義・・・「意味のある言語的要素を解読(解釈)し、また符号化(形成)する能力が複数のモダリティにおいて低下している状態であり、それは聞く,読む,話す,書く能力の障害として現れる。」
◇失語症とは、「話す」,「聞く」,「読む」,「書く」,というコミュニケーションに関わる言葉の障害である。
①話し言葉の障害(左大脳前方のブローカ野の損傷)
話そうとするが言葉が出てこない。聞かれたことは理解できるが、言葉がでてこない。聞きたいことがあるのに聞けない。滑らかに喋れない。スムースだけど、言葉の言い誤りがある。つっかえつっかえ話す。
②聞き言葉の障害(左大脳側方のウェルニッケ野の損傷)
相手の言っている言葉の意味がわからない。聴力に問題はないが、言葉の意味がわからない。聞こえた言葉が意味に結びつかない。聞いた言葉を記憶できない。話題が急に変わるとついていけない。
③読み言葉の障害(左側頭葉後下部…左角回)
文章を読めない。視力,視野には問題がない。書いてあることがわからない。文字を書くことはできる(書けるけど読めない)。読むのに時間がかかる。読んでいるうちに前に読んだ情報を忘れる。
④書き言葉の障害(左側頭葉後下部…左角回)
文字を書けない。文章が書けない。書き間違いが多い。
◇失語症の分類
①ブローカ失語
運動失語。言語の表出面が主として障害される失語で、運動性言語中枢であるブローカ中枢の損傷により生じる。
②ウェルニッケ失語
感覚失語。言語の理解面が主として障害される失語で、聴覚性言語中枢のウェルニッケ中枢の損傷により生じる。
③伝道失語
著明な復唱障害と錯語を特徴とする。責任病巣として優位半球のウェルニッケ領域とブローカ領域をつなぐ球状束の損傷が挙げられる。
④健忘失語
喚語困難を特徴とする。復唱や言語理解は良好で、読み書きにも大きな障害はない。
◆失認症
◇定義・・・「感覚や意識障害や知的障害がないにもかかわらず、認知できない状態。」
◇失認とは、見ること(視覚),聞くこと(聴覚),触ること(触覚)の機能には問題はないが、それが何であるのかがわからない症状をいう。それぞれ視覚失認,聴覚失認,触覚失認といわれる。
中でも視覚失認が多い。物は見えているのに、それが何であるのかがわからない。見せられたものを1つのまとまった形としてはとらえられない。1つのまとまった形としてはとらえられるが、意味として結びつかない。
◇失認症の分類
①視覚失認
視覚障害,視野欠損,色覚異常,眼球運動障害や失語,失行,精神障害などによって説明できない対象物や空間の視覚的認知障害である。
②視空間失認
視覚失認が視覚の対象物に対する認識障害であるのに対して、視空間失認は個々の物体が空間において占める位置や,物体間の空間関係に対する視覚による認知障害である。
③身体失認
身体像に関する認知障害である。
◆失行症
◇定義・・・「運動麻痺,失調,不随意運動などの運動障害がみられず、また行なう行為,動作,運動などを了解しているにもかかわらずそれらを実行できない状態である。」
◇失行症とは、日常生活で何気なく行っている一連の動作がうまくできないことを差す。簡単な動作であり、何であるかも理解しているけれど、実際にやってみるとうまくできない症状である。麻痺,失認,失語の問題では説明できない動作の障害である。
どのように動作するかを正しく認識できているのに、その行為を正しく遂行できない。
◇失行症の分類
①肢節運動失行
身体の一部に限局して現れるもっとも低いレベルの失行であり、失行と麻痺の移行型ともいわれる。運動は拙劣となり、経験的に習得した熟練運動ができなくなる。
②観念運動失行
動作に必要な観念形成レベルは保存されているが、それらの構成成分が障害されている。自然な状態で行う動作は普通に行うことができるが、単純な運動や物品を扱う動作を言語命令や模倣などにおいて行うことが困難である。
③観念失行
個々の部分的な動作はできるが、道具などの客体を用いる複雑な系列行為を行うことができない。複雑な後遺障害、または客体使用の障害と定義されている。重度の失語症を伴うことが多い。
④構成失行
個々の運動の失行はなく、操作の空間的形態が侵される行為障害である。
⑤着衣失行
物体失認や他の失行が存在しないのに、衣服をきちんと着ることができない状態になる。
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◆その他の症状
◇半側空間無視
右脳が損傷されると、左の視野に障害がおこることがある。左側が見えないのではなく、左側に意識が行かないために、左側にある物が認識できない症状である。右脳は左側空間への意識に関与している。
◇半側身体失認
半身に麻痺があっても自分が麻痺をしていると認知できない症状である。不自由になった身体のことを話題にするのをわざと避けているのではなく、自分の身体が不自由であることに意識がないためである。
◇遂行機能障害
遂行機能とは、目的をもった一連の活動を有効に成し遂げるために必要な機能であり、自ら目標を設定し、計画を立て、実際の行動を効率よく行う機能である。遂行機能障害は、このような通常行う「段取り」や「手順」がうまくできないことをいう。
◇記憶障害
昔のことを思い出す記憶は保たれているが、「今」見たこと,聞いたことを数分~数時間後にはすぐに忘れてしまう記憶の障害のことである。
◇注意障害
「注意の持続」,「選択性注意」,「同時処理」,「注意転換」、という4つの注意機能がうまくいかないために起こる。
①注意の持続:一つのことが続けられない。
②選択注意:まわりの状況に気づかない。
③同時処理:まわりの越えや音にすぐに注意が行ってしまい、落ち着かない。
④注意の転換:状況に応じて注意を変換できず、同じことを何度も言ったり、同じ行動を繰り返したりする。
【参考文献】
- 中島 恵子:「理解できる 高次脳機能障害」 三輪書店 2009.
- 社団法人 日本作業療法士協会:作業療法全書「改定第2版」 第8巻 作業治療学5「高次神経障害」 協同医書出版社 1999.
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