実習先ではパーキンソン病の方を
症例として担当させてもらうことも比較的多いと思います。
今回は臨床実習に向けて、
パーキンソン病の評価方法・リハビリ方法を
まとめてみました。
基礎的な部分をしっかり把握しておくことが大切です。
Yahrの分類で各ステージよって、
アプローチやリハビリなようが変わってくると思います。
このあたりを考えて評価やアプローチにつなげられるように
しっかり勉強していきましょう!!
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目次
パーキンソン病の疾患概要
パーキンソン病とは、脳の大脳基底核・黒質緻密部にあるドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の神経変性疾患である。
50~65歳の発症が最も多く、高年齢になるほど発症率は増加する。わが国の患者数は人口10万人当たり100~150人と推定される。
根治療法あるいは進行を止める治療法は確立していないが、薬物療法の進歩により症状の進行をある程度遅くすることが可能になっている。
パーキンソン病の障害像
・四大徴候として、振戦、筋固縮、無動・寡動、姿勢反射障害がある。
・長期の薬物治療を必要とすることから、副作用による運動障害を示す場合もあり、注意を要する。
・運動症状以外の障害として自律神経障害(便秘など)、神経因性膀胱、起立性低血圧などが認められることもある。
・精神障害として抑うつ症状、認知機能障害、睡眠障害などがみられる。
パーキンソン病の評価法
・面接・観察・情報収集;社会的情報や患者の全体像、服薬状況(wearing off現象やon-off現象の有無)、COPMなど
・関節可動域;初期には比較的よく保たれていても、病気が進むと固縮から屈曲優位のパターンをとり、主に屈曲、内転拘縮を起こしやすい。頸部、体幹(屈曲、伸展、回旋)の可動域にも注意する。
・筋緊張;筋固縮の状態。鉛管様固縮、歯車様固縮の有無。
*筋を伸長するときに一様に持続的な抵抗があるときは鉛管様。伸長途中でガクガクと断続的な抵抗を感じる時は歯車様。歯車は筋トーヌス亢進に安静時振戦が加わった症候。
・筋力;固縮と運動制限による廃用性萎縮などにより、筋力低下をきたす。精神症状による見かけ上の筋力低下にも留意する。
・姿勢反射;立位で上部体幹を引いた際の立位保持が可能か、ホッピング反応が出現するかどうか、立ち直り反応が出現するかどうかを評価する。
・姿勢評価;特徴的な立位姿勢をとる。重心線と比較し異常アライメントについて評価する。姿勢抑制と体幹四肢機能を関連付けて動作パターンを評価する。嚥下障害にも頸部から上位胸椎の異常アライメントが影響している。
・ADL;初期から中期の患者ではほとんどのADLはゆっくり時間をかければできることが多く、むしろ移動動作に問題があることが多い。できない動作は何かの症状によって制限されている。
・上肢機能;STEF、FQテストなど
・知的側面;MMSE、コース立方体、WCSTなど
・心理的側面;抑うつなど
・重症度分類はHoehn&Yahrの5段階分類。また統一パーキンソン病評価スケール(UPDRS)がある。
【Yahrの各ステージにおけるリハビリテーション内容】
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パーキンソン病のアプローチ・リハビリ方法
パーキンソン病のリハビリテーションで大切なことは薬物療法と並行して他面的な介入と練習・指導が必要であり、全病気にわたり有効とされている。また、パーキンソン病の運動療法は、機能回復だけではなく、機能廃絶予防や日常生活をできるだけ長く維持することを目的とすることが多い。また、介入方法には様々な手法があり、エビデンスが明確なものと、経験的なものが混在して実施されているのが現状である。
パーキンソン体操
体操はまずリラクセーションをしてから始める。体力面や立位バランス・坐位バランスを考慮してケースに合ったものを指導する。バランス面を考慮すると臥位は安全なポジションだが筋緊張を考えると坐位が最もリラックスできるポジションである。
パーキンソン病に対する筋力増強運動
立位・座位姿勢や歩行の安定性確保のために体幹筋、股・膝伸筋群を中心に全体の筋力を向上させる。しかしながらパーキンソン病では全身性のミトコンドリア以上が示唆されており、同じ運動に対して正常人の二倍の運動量が必要になると報告されている。またL-ドパ療法は筋肉の生理学的変化をもたらし仕事量を減少させるともいわれている。病棟や主治医との連携が必要となる。
また筋力増強や維持のプログラムは粗大な動作を取り入れたものがよい。パーキンソン病患者の場合、要求される筋力に達するまでに時間的な遅れがみられるため、瞬発的な筋収縮を高めることが目的の一つになる。そのため動作の開始や終了を規定する要素や目標物の設置などの工夫が必要である。利用される作業としては、角度づけされたサンディングやセラパテ・セラバンドの操作、重錘の利用がある。アクティビティとして木工なども使われる。
体幹の伸展運動を促し、リズムの良い四肢の交叉運動が適しており、材料や道具の置く場所などで工夫できる作業を導入する。例えばマクラメは壁にかけ、体幹を伸展させる。革細工のスタンピングはリズムを付けて行う。ネット手芸は紐の長さや太さを調節するなどの工夫をして段階づける。
パーキンソン病に対する嚥下練習
間接的摂食訓練として顔面・頸部のマッサージをおこない、舌、口唇、眼球、上肢などをリズミカルに行わせること。口腔内、舌表面、前頸部、頬などにアイス刺激加えると有効なことがある。また患者がリラックスして摂取できるように姿勢やテーブルの高さのセッティング、安定した皿や太い柄のスプーンのように食器や道具の工夫を行う。
パーキンソン病に対する基本動作の練習
寝返り・起き上がり
非常に苦手な動作の一つである。寝返りは両膝を曲げて寝返る側に倒し、重力を利用して側臥位となる方法がよく利用される。起き上がりは側臥位から腹臥位となった後、股関節を一側ずつ屈曲し起き上がってくる方法、あるいは両下肢の反動を利用して起き上がる光景をよく見る。そのため、基本動作練習の中では対角回旋性の動き(体が回旋する動き)を引き出すような動作練習がリハビリの場面で実施される。Yahrのstage1、2の程度が軽い場合は良いのだが、進行期になると基底核障害のため、新しい動作の獲得がますます困難になり、練習場面では実施できていても生活場面では行えない症例が多くみられる。進行期では回旋動作が伴わなくても、より安定した安全な方法を指導する。
椅子からの立ち上がり
パーキンソン病の特徴的な前屈姿勢から判断すると重心が前方にあると思われがちだが、顎が前方に突出した亀の首様姿勢(体幹前屈・頸部伸展)により寧ろ後方にあるとの報告もある。顎を十分引いてからの重心の前方移動と立ち上がり、立位時の支持基底面確保がポイントとなる。
パーキンソン病に対する関節可動域運動・姿勢矯正運動
パーキンソン病では筋固縮や姿勢保持障害により変形や拘縮を起こしやすい状態にある。症状が進行し、Yahrのstage3に入ると側弯が出現する場合もある。パーキンソン体操による関節可動域の維持、改善や姿勢矯正、筋肉の伸長を行う。
ROMは自動運動時の速度や範囲の拡大などを目的に行う。訓練は自動運動で一動作を速く大きく行うことが望ましい。変形や拘縮を起こしやすい肢位は体幹前屈、頸部前屈、肩関節屈曲、内転、肘関節屈曲、手関節軽度背屈、MP関節屈曲、股関節・膝関節屈曲などである。そのため特に体幹、頸部、伸展・回旋方向への運動を重点的に行う。利用される作業には、輪投げの入れ外し、織物、段通などがある。
作業時は長時間にわたり同一姿勢で作業を行わせると、姿勢変換や姿勢の自己修正が困難になりやすい。そのため、同一姿勢の作業の短縮や単調な作業の反復とならないように対応する。
姿勢訓練は、姿勢異常、特に体幹・頸部前屈は立ち直り反応を遅延させるだけではなく、発声言語、嚥下にも悪影響を及ぼす。屈曲姿勢を防止する目的で棒体操、風船バレー、輪移動などを用いる。体幹の伸展回旋を行いながら、体重移動を促すよう作業時の姿勢や物品の配置に工夫する。最大の運動範囲を確保すし、より効果的に施行するため、起立台、チルトテーブルを利用したり、フレキシスタンドなどの動的立位保持装置を用いるのもの有効である。
パーキンソン病に対するバランス練習
Yahrのstage1,2のバランス障害が認められない早い時期から積極的に反復練習を行う。stage3以降のバランス障害が目立ってくる時期では、状態に応じ、難易度を変え、バランス練習を継続する。日常生活においては特に後方バランスの障害がドアの開閉や方向転換、物の出し入れ、浴槽への出入りに影響を与えるので、生活場面での動作指導や環境整備が重要である。
パーキンソン病に対するADL指導
セルフケアでは更衣動作がまず困難になる。パーキソニズムによる巧緻性の低下、関節拘縮によるリーチ範囲の制限などの理由から、ボタンの留め外し、上衣の着脱、ズボンの引き上げ、靴下、靴の着脱、落とした衣服の引き上げなどが障害されやすい。これらの更衣動作の指導でまず注意する点は安全面の確保である。また動作の効率化を図る。ボタンエイドの利用、ボタンの代わりにベルクロテープを使用するなど。
パーキンソン病に対するIADL指導
Yahrのstage2~3の段階においてはADLよりもIADLに障害が目立つ。調理、電話の操作、財布の開閉や袋の開閉、ビンや缶の蓋の開閉の可・不可、操作遂行時間などを評価し、動作指導や福祉用具の導入を行う。
また上肢機能訓練として手拍子やメトロノームなどを用いた聴覚的刺激で反復動作をリズミカルに行ったり、視覚的な目標設定をおくとうまく遂行できる。ボール投げ、ボール蹴り、卓球など粗大な運動、上肢拳上位でのペグ棒の反転、紐結びなど粗大運動と細かな協調性運動が組み合わさった作業を選択する。
中枢神経疾患によくみられる両側同時操作障害もパーキンソン病患者で出現しやすく、両手の同時操作も訓練内容に盛り込むようにする。四肢を交互に操作することも困難になりやすい。そのため両上肢によるペグボード使った訓練や機織り、マクラメ、ちぎり絵などを使った訓練を行う。
実習でのパーキンソン病の患者さんに対応・注意点
・どのステージの人が症例として当たるかによって、プログラムの内容は変わってくる。
・パーキンソン病の方は自分から運動を企画して動く、発動することが苦手という特徴がある。
・日常生活の中でそパーキンソン病の特徴に注意をすることが必要。
・個人のADLによって対応を考えると良い。その際リズム刺激や視覚的なアプローチをすることが有効と言われている。
・また固縮があるので可動制限に注意が必要。
参考文献
1)山永裕明,野尻晋一:図説パーキンソン病の理解とリハビリテーション,三輪書店.
2)福岡県理学療法士会専門領域推進部 神経系専門領域研究部会 神経難病班:神経難病評価集
3)聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーション部作業療法科:OT臨床ハンドブック ポケット版 増補版,三輪書店.
4)石川斎,古川宏 編:図解 作業療法技術ガイド―根拠と臨床経験にもとづいた効果的な実践のすべて (第3版),文光堂.
5)中馬孝容 :〈教育講演〉パーキンソン病のリハビリテーション(EBMに基づくガイドライン),リハビリテーション医学vol.41 no .3 2004;41:162-167
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